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【薬剤師監修】薄毛改善、AGA治療薬プロペシアの全てを解説

AGA(男性型脱毛症)は男性ホルモンが原因となる薄毛で、年齢と共に発症率が上昇することが分かっています。その発症率は統計的に20代で6%、30代で12%と少しずつ上昇し、40代になるとなんと32%まで上昇する進行性の病気です。

AGAの治療には、外用剤だけでなく内服薬も開発されており、日々治療法が進化していますので、薄毛が気になったら少しでも早めに専門医に相談し、適切な治療を始めることが、進行を遅らせるには重要です。今回は薄毛の治療薬プロペシアについてのお悩みにお答えします。

薄毛改善の定番!AGA治療薬プロペシアとは

プロペシアは、アメリカメルク社が開発したフィナステリドという男性型脱毛症(AGA)治療薬です。元来抗アンドロゲン薬で、高容量(5㎎/day)では、前立腺肥大症・前立腺癌治療薬として開発されましたが、日本では未承認の適応となっています。

しかし、低用量(0.2mgまたは1mg/day)で使用することで、AGAに対して脱毛抑制効果が認められ、日本ではプロペシアという商品名で発売されています。既に、2015年に特許が取れており、数社から後発薬が発売されています。
      

薄毛が改善する?プロペシアの効果とその実証

では、具体的にプロペシアの効果は、どうなのでしょうか?

ヘアサイクルと抜け毛

効果のご説明をする前に、ヘアサイクルと抜け毛の関係についてご説明します。毛髪には、ヘアサイクルと言われる、毛母細胞の発生→成長→消失→脱毛という循環があります。このヘアサイクルは、正常であれば、成長期が3~6年、退行期が2~3週間で、この期間に毛根が徐々に抜け上がっていきます。

次に休止期が2~3か月で、毛乳頭の活動が止まり、発毛期への準備として、新しい毛母細胞が発生し、毛乳頭に向かって成長していきます。そして発毛期になると毛乳頭と結びついた毛母細胞が再び活発に活動を開始し新しい髪を作り始めます。

再び発毛期になった新毛は頭皮の中で暫くの間は細く透明な産毛状態となります(新生毛)。脱毛が起こる方は通常3から6年続くこの発毛期が短期間に終了し、退行期へ以降してしまうことが原因となります。

DHTとは

発毛期が短くなる原因として、男性ホルモン、特にDHT(5α-ジヒドロステロン)や、皮脂の過剰分泌により毛根が炎症を起こし、毛母細胞の成長が止まってしまうことや、血行不良による栄養不足により毛根の働きが弱まること、粗悪なシャンプーやリンス、染毛、脱色、パーマなどによる頭皮の損傷などが分かっています。

このDHTは、男性ホルモンテストステロンから5αリダクターゼにより作られ、毛母細胞に直接作用し、その成長を止めることにより、発毛期を止める働きがあります。

プロペシアの効果

プロペシアは、2型5αリダクターゼを阻害し、男性ホルモンがDHTに転換されるのを抑制することで、毛母細胞の発毛期が短縮するのを防ぐ働きがあります。ですので、メカニズム的には脱毛を抑制するのであって、発毛に作用する薬ではありません。

プロペシアの効果はどの位の割合で実証されているのか?気になる所です。プロペシアの効果は、臨床試験(人を対象とした試験)で確認されており、AGA(男性型脱毛症)の進行抑制は3年間で98%の方に効果が確認されました。また、髪が増えた方は、半年で48%、1年で58%、2年で68%、3年で78%と、服用時間に伴い上昇することが分かりました。また、髪の質(長さ、太さ)の改善、頭頂部(O型)、生え際(U型)の両方に効果がありました。

ただし、女性に対しては効果がありません。またAGA以外の脱毛症(円形脱毛症など)にも効果はありません。

AGA検査

薄毛が気になりプロペシアのご使用を検討されている方へ、服用を開始する前にAGAチェックを受ける事をアドバイスさせて頂きます。AGAチェックとは、血液や毛髪のDNA配列を調べることで、プロペシアの効果を予測することができるという検査です。

その仕組みは、AGAの原因となるDHTが作用する毛乳頭細胞の男性ホルモンレセプターのDNA配列には、cgaリピートという塩基の繰り返し構造があり、この構造の長さには個人差があります。cgaリピートの長さが短いほどAGAのリスクが高く、フィナステリドの効果も高いものとなります。

AGAチェックは、血液を採取するか、後頭部の毛髪を10本程採取して行います。この結果は年齢によって変化しませんので、検査は1度のみです。

質問コーナー

プロペシアの内服についてよく頂くご質問を参考のために記載します。

Q)1、プロペシアは飲んでどのくらいで効くの?

A)プロペシアの効果は、3~6か月間の服用後に判断してください。その理由として、髪にはヘアサイクルというものがあり、通常、発毛期(3~6年)→退行期(2~3週間)→休止期(2~3か月)→再び発毛期へということを繰り返しています。

薄毛の方は、この発毛期が短期間で終了し休止期になってしまうので、お薬が効いて次の発毛期に入るまでに少なくとも休止期の2~3か月は必要となります。この期間は非常に不安だと思いますが、一つ効果の目安となる方法があります。

薄毛は、頭頂部、前頭部に限った病気ですので、側頭部は薄毛になりません。そこで、プロペシアを服用中に側頭部と、頭頂部、前頭部の抜け毛の太さ比較してみてください。髪は、発毛期の長さと共に太くなっていきますので、太さの差を比較することで、薬の効果が現れているかおよその判断ができます。

Q)2、油が多い薄毛でもプロペシアは効果はあるんでしょうか?

A)薄毛の原因として、男性ホルモン、特にDHT(5α-ジヒドロステロン)や、皮脂の過剰分泌により毛根が炎症を起こし、毛母細胞の成長が止まってしまうことや、血行不良による栄養不足により毛根の働きが弱まること、粗悪なシャンプーやリンス、染毛、脱色、パーマなどによる頭皮の損傷などが分かっています。

ご質問の様に皮脂の多い頭皮は毛母細胞を痛め薄毛を進行しますので、皮脂のお手入れは薄毛対策としては重要です。但し、DHTは皮脂の多さに関わらず毛母細胞を痛めますので、プロペシアでその生成を抑制することが、薄毛対策の一つとなります。

また皮脂が多い方のお手入れ方法として、頭頂部、生え際が皮脂の影響を受けて薄毛になりますので、シャンプーをされる時は、頭皮を痛めないように指の腹の部分を使って、常に頭頂部、前頭部の皮脂をしっかり落とすことを心がけてください。

Q)3、プロペシアの治療費はどのくらいかかるの?

A) 薄毛治療は、残念ながら自由診療(保険が効かない)になりますので、治療費は全額自己負担となります。ですので、同じプロペシアでも処方される病院によって費用が異なります。

参考までに、通常1か月分プロペシアで8,000円程度、プロペシアと同じ成分フィナステリドを含む後発品で6,500円程度、ザガーロで9,500円程度です。

ただし、これ以外に初診料が3,000円程度、再診料が800円程度かかります。病院によっては、クレジットカードが使える所もありますので、事前にホームページ等で確認されることをおすすめします。

また自由診療でも処方箋が発行されますので、確定申告で医療費控除が受けられますので、有効に活用してください。

Q)4、海外品の通販で安く購入してもいいの?

A)昨今個人輸入代行業者からプロペシアを安価に購入することができますが、偽造医薬品の可能性もあり厚生労働省も注意を喚起しています。また、医師の診断を受けていませんので医療費控除の対象にもなりません。利用は控えた方がよいでしょう。

薄毛改善策!気になるプロペシアの副作用

プロペシアには、重篤な副作用の報告はありません。但し、頻度は不明ではあるものの肝機能障害が起こり得るとされています。その他、1%以上5%未満の方に性欲減退、1%未満の方に勃起機能不全、射精障害、精液量減少が見られています。

プロペシアは、男性ホルモンそのものを止めてしまう薬ではありませんので、女性化することはありません。また、男性機能の低下や肝機能の障害は、発生頻度が低いものですので、定期的に検査を受ける事や、医師の判断で使用を中止すれば回復します。

使用禁忌とされている方は、プロペシアに対して過敏症の既往歴がある方、妊婦または妊娠している可能性のある婦人および授乳中の方とされ、服用中の献血、休薬後1カ月以内の献血は行えません。

また副作用の発症時期は明確ではありませんので、異常を感じたら医師に相談してください。

薄毛改善策!プロペシアとザガーロの違い

ザガーロは2015年に承認されたAGA治療薬で、有効成分デュタステリドを含有している内服薬です。ザガーロもプロペシア同様、AGAの原因となるDHTを生成する5αリダクターゼを阻害する効果があります。

ザガーロはプロペシアよりも効果が高いとされており、その理由はプロペシアが2型5-α還元酵素のみを阻害するのに対して、ザガーロは5αリダクターゼの1型、2型共に阻害する効果があるからです。

ただし、この2つは類似した薬ですので、併用することは勧められていません。また、ザガーロの方が価格も高い為、クリニックでドクターのアドバイスの基、どちらかを選ぶことが大切です。

薄毛が改善された時プロペシアを中止するとどうなる?

プロペシアは、2型5αリダクターゼを阻害し、男性ホルモンがDHTに転換されるのを抑制することで、毛母細胞の発毛期が短縮するのを防ぐ薬で薄毛を根本的に治す薬ではありませんので、プロペシアの服用を止めれば再びDHTが作られ易くなり、再びAGAが進行します。

一方プロペシアの主な副作用である性欲低下やED(勃起不全)、肝機能の低下といったものは、プロペシアの服用を止めれば回復します。ただし、副作用を訴えた方の約5%(服用者の0.25%)の方で、 ポストフェナステリド症候群(PFS)が確認されており、プロペシアの服用を止めても、ED、性器に関する障害、疲労感と倦怠感や耳鳴りなどの体調不良が続く方がいることが分かっています。

質問コーナー

こちらも、よく頂くご質問がありますので、参考に記載します。

Q)1.やはり一度飲めば二度とやめられない体になってしまうのでしょうか?

A)プロペシアは、男性ホルモンを、髪の基となる毛母細胞の成長する期間(発毛期)を短縮し薄毛にする働きのあるDHT (5α-ジヒドロステロン)に変える酵素(5αリダクターゼ)を阻害し、DHTの生成量を減らすことで薄毛の進行を止めるお薬です。

つまり薄毛を根本的に治す薬ではありませんので、プロペシアの服用を止めればDHTが作られ易くなり、再び薄毛が進行します。確かに一度飲み始めたら、止められない薬という不安があると思いますが、習慣性のあるお薬ではありませんので、ある程度の年齢になり、薄毛に抵抗が無くなったら服用を止めるという考え方で服用を始めてみてはいかがでしょうか。

Q)2.プロペシアを飲むと体の抜け毛機能と生やす機能が薬なしでは機能しなくなってしまうのでしょうか?

A)薄毛(AGA)とは、髪が成長する期間(発毛期)が男性モルモンから出来るDHTの働きで短縮してしまう病気です。プロペシアは、この異常に増加したDHTの生成量を正常化するお薬ですので、髪を生やす機能そのものに影響を及ぼすものではありません。

まとめ

●プロペシアは、2型5αリダクターゼを阻害し、男性ホルモンがDHTに転換されるのを抑制することで、毛母細胞の発毛期が短縮するのを防ぐ働きがあります。
●プロペシアの効果は、臨床試験でAGA(男性型脱毛症)の進行抑制は3年間で98%の方に効果が確認され、髪が増えた方は、半年で48%、1年で58%、2年で68%、3年で78%と、服用時間と伴に上昇することが分かりました。
●プロペシアの効果は3~6ヶ月間の服用後に判断してください。
●プロペシアを開始する前に、AGA検査を受けることで、どの程度プロペシアの効果があるのか、およその予測が可能です。
●サガーロは5αリダクターゼの1型、2型共に阻害する効果がある為、2型5-α還元酵素のみを阻害するプロペシアよりも効果が高いとされています。
●プロペシアの副作用として、1%以上5%未満の方に性欲減退、1%未満の方に勃起機能不全、射精障害、精液量減少が見られています。
●プロペシアは薄毛を根本的に治す薬ではありませんので、プロペシアの服用を止めればDHTが作られ易くなり、再び薄毛が進行します。

薄毛には、AGA治療薬のプロペシアがどの程度の効果が期待出来るのかについてご説明してきました。AGAの進行を少しでも遅らせるために、3つのアドバイスをさせていただきます。

1つ目は、AGAの原因となるDHTによって頭頂部、生え際には皮脂が発生し、毛母細胞の成長を阻害しますので、常に頭頂部、前頭部の皮脂をしっかり落とすことを心がけてください。2つ目は、プロペシアの効果は、3~6か月しっかり継続してから判断してください。3つ目は、ご自身の抜け毛の太さと側頭部の毛の太さを比較して、プロペシアの効果を
確かめてください。

薄毛の原因を知って、正しいケアを心がけましょう。