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ステロイドで抜け毛?毛根は無事なのか?アトピーの謎に迫る

アトピー性皮膚炎は、非常につらい病気です。重い皮膚トラブルを招く症状であることから、抜け毛が併発することもあります。そこで今回は、アトピー性皮膚炎が原因となって起こる抜け毛の症状やその対処法について、詳しく見ていきましょう。

アトピーの抜け毛、毛根は無事?

 

アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎とは、皮膚に生じるアレルギー反応(本来は人体に無害な成分に対して免疫反応が起きてしまうこと)によって引き起こされる 炎症のことをいいます。免疫反応のターゲットとなる成分(アレルゲン)に対し、体内のリンパ球が集まり攻撃を加えます。その結果、皮膚に炎症が起きてしまうのです。

炎症による抜け毛

アトピー性皮膚炎に抜け毛が伴う場合、まず考えられるのは「 炎症による抜け毛」です。頭皮環境が炎症により悪化したため、髪に栄養が行き渡らなくなり起きてしまう抜け毛です。 毛根が機能を停止しているわけではありません。頭皮環境を健康な状態に戻すことができれば、抜け毛も改善することができます。

円形脱毛症

アトピー性皮膚炎に伴う抜け毛として、もうひとつ考えられるのは「円形脱毛症」です。 円形脱毛症の原因も体の免疫反応であり、アトピー性皮膚炎と深い関連があります。事実、円形脱毛症の患者200人について調査したところ、実に108人(54%)の患者について、患者本人及びその家族にアトピー素因があると認められたという報告があります。
参照:「円形脱毛症診療ガイドライン2010」(日本皮膚科学会)

円形脱毛症の場合も、毛根の機能が停止しているわけではありません。円形脱毛症が起こるきっかけは、毛包の周囲にリンパ球が集合することです。集合したリンパ球による免疫反応の結果、 毛包のヘアサイクルが成長期から休止期に移行してしまうことで、抜け毛が起こります。ヘアサイクルのうち成長期が顕著に短くなりますが、ヘアサイクル自体が停止するわけではありません。

毛根が死ぬわけではない

もしかすると、「1つの毛根から3回髪の毛が抜けるともう生えなくなる」といった話を聞いたことがあるかもしれません。しかし「炎症による抜け毛」と「円形脱毛症」のどちらの場合も、毛包のヘアサイクル自体は回っています。したがって、アトピーが治った後に抜け毛が続いていたとしても、もう生えてこないということはないのです。

アトピーのステロイド治療で抜け毛が起こるの?

 

脱毛は主たる副作用ではない

アトピー性皮膚炎の治療に用いられるステロイド外用薬は、「重い副作用がある」として悪者にされてしまうことがあります。しかし、ステロイド治療による副作用のデータは医療機関にちゃんと蓄積されており、医師の処方のもと正しく使えば安全に効果を得ることができます。

また、「ステロイド治療の副作用で抜け毛が起きるのでは?」と不安に思う人がいますが、ステロイドの副作用として脱毛は主たるものではありません。仮に副作用として抜け毛が起こっても、ステロイドを減量することで症状を改善できます。なお、ステロイドの主たる副作用としては、以下のような症状が挙げられます。
・感染症
・骨粗しょう症
・糖尿病
・潰瘍
参照:(東京女子医科大学病院 腎臓病総合医療センターHP)

またステロイド外用薬以外にも、免疫抑制のための内服薬として「シクロスポリン」が用いられることがあります。こちらについても、脱毛は主たる副作用ではありません。
参照1:(アトピー性皮膚炎 シクロスポリン使用ガイド)
参照2:(日経メディカル処方薬事典)

したがって、ステロイド外用薬も免疫抑制のための内服薬も、医師の処方に従って正しく使っていれば、抜け毛の副作用を過剰に恐れる必要はありません。   

アトピーが治っても続く抜け毛はどの位で回復するのか

   

炎症によるダメージで頭皮は乾燥している

アトピー性皮膚炎が治った後にも抜け毛が続いている場合、髪の毛を元に戻すためにはいったい何が必要なのでしょうか。抜け毛の原因が「円形脱毛症」の場合は、毛包の免疫反応を抑えるために専門医の治療を受ける必要があります。そこでここでは、「炎症による抜け毛」の場合を考えてみましょう。

アトピー性皮膚炎が治ったのなら、頭皮の状態はかなり改善されているはずです。抜け毛の原因だった炎症が治ったことで、髪に栄養が行き渡り始めているはずです。ただし、ヘアサイクルを考えると既に成長期を過ぎて抜ける準備に入っている退行期(2~3週間)いつ抜けてもおかしくない休止期(3~4ヶ月)が過ぎ去らないと正常なヘアサイクルにならないので、回復には3~6ヶ月かかると考えた方がいいでしょう。

それでもまだ抜け毛が続いている場合は、頭皮環境のさらなる改善が必要だということです。アトピーの炎症によってダメージを受けた頭皮は、 健康な頭皮に比べて乾燥した状態になっています。健康な頭皮には適度な水分や油分が保たれており、それが「頭皮バリア」となって頭皮を守ります。しかし頭皮が乾燥した状態だと「頭皮バリア」が働かないため、抜け毛が治まりきらないのです。

保湿ケアをしよう

そこで、「保湿」を心掛けた頭皮ケアを行いましょう。入浴の際には、頭皮に刺激を与えないよう注意します。 頭皮が荒れたままだと、保湿機能がうまく働かないからです。石鹸やシャンプーは低刺激のものを使い、お湯の温度も少しぬるめにしましょう。また、髪を洗うお湯を塩素除去するのも効果的です。塩素は頭皮への刺激が強いからです。塩素除去機能付きのシャワーヘッドを使うと便利です。

お風呂から上がった後はできるだけ早く、頭皮に保湿ローションを塗りましょう。もちろん、保湿ローションを塗る前には、お風呂上がりの水分をしっかり乾燥させてください。 生乾きのまま保湿ローションを塗ると、雑菌が繁殖する原因になります。

こうした頭皮ケアを続けることで、頭皮環境は次第に改善されていきます。頭皮ケアをしばらく継続しても改善が見られない場合は、円形脱毛症あるいはその他の症状が隠れている可能性があります。皮膚科を受診するようにしましょう。円形脱毛症であれば、ステロイド局所注射や局所免疫療法といった有効な治療法が確立されています。

アトピー持ちの抜け毛に良いシャンプー

  

低刺激のシャンプーを選ぼう

アトピーが治ったとしても、アトピーになりやすい体質であることには変わりません。炎症が再発しないように、シャンプーの選び方にも注意する必要があります。ここでシャンプーを選ぶ際にいちばん大事なのは、低刺激のシャンプーを選ぶという点です。

シャンプーは洗浄剤の成分から、次の3種類に分類することができます。
・高級アルコール系シャンプー
・石鹸シャンプー
・アミノ酸系シャンプー

このうち、もっとも低刺激なのは「アミノ酸系シャンプー」です。ネーミングからすると、石鹸シャンプーには余計な添加物が含まれず頭皮に優しいような気がしますが、実は洗浄力が強く頭皮に刺激を与えます。これに対してアミノ酸系シャンプーは、洗浄力が低い分、頭皮への刺激を最小限に抑えることができます。アトピーになりやすい体質の人には、アミノ酸系シャンプーが向いています。

アレルゲンに注意

ただし、アミノ酸系シャンプーと一口に言っても、その成分は商品ごとに異なります。自分のアレルゲンが含まれたシャンプーを選ばないように、注意する必要があります。では、どのように注意すればよいのでしょうか。そこで、日本毛髪科学協会の電話相談で聞いてみました。

――成分表を見てもアレルゲンが含まれているかわからない場合、どうすればいいですか?
「もっとも簡単なのは、使用前に自分でパッチテストする方法です。シャンプーを塗布した絆創膏を腕に貼り、20~30分待ちます。その後絆創膏をはがして赤くなっていれば、アレルゲンが含まれている可能性があります。より正確な検査をしたい場合は、皮膚科に相談してください」

アトピーの抜け毛に育毛剤は効果あるのか?

 

育毛剤はアトピーに直接効くわけではない

市販の育毛剤に含まれる発毛成分は、その多くがホルモンバランスを整えるためのものです。たとえばAGA(男性型脱毛症)に効果があるミノキシジルという成分は、男性ホルモンが抜け毛を引き起こす作用を阻害する効果を持っています。しかしアトピー性皮膚炎が原因の抜け毛は、ホルモンバランスによって起こるものではありません。

したがって、アトピーの抜け毛対策という観点からは、育毛剤はあくまでも補助的なアイテムと考えるべきです。育毛剤には、保湿効果や血行促進効果もあります。そうした効果を利用して、頭皮環境を改善していくためのアイテムとして使うのです。

保湿ローションを使うほうが安全

ただしアトピー体質の人には、育毛剤を使うことのリスクがあります。まず、育毛剤の成分にアレルゲンが含まれている可能性があります。また、育毛剤に含まれるアルコールが、アトピーの敏感肌に不要な刺激を与えてしまう可能性もあるのです。肌に合わない育毛剤を使うと、症状がかえって悪化する恐れがあります。

そこで、保湿効果を高めるという観点からは、育毛剤よりも 保湿ローションを使ったほうが無難です。ワセリンや植物オイルで作られた保湿ローションなら、肌への刺激もあまりないので安心です。入浴後にすぐ保湿ローションを使用することで、頭皮を乾燥から守りましょう。

まとめ

 
それでは最後に、今回ご紹介した内容をまとめます。

・アトピーによる抜け毛でも毛根は死なない
・アトピー治療薬の副作用を過剰に恐れる必要はない
・アトピーによる抜け毛は頭皮を保湿ケアして回復を待とう
・アレルゲンに注意してアミノ酸系シャンプーを使おう
・育毛剤よりも保湿ローションで頭皮をケアしよう

アトピー体質の方が抜け毛に関してもっとも気を付けるべきは、頭皮の乾燥だと思います。毎日の生活の中で頭皮の保湿を心掛けることこそ、アトピーによる抜け毛を改善するためのいちばんの近道です。