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【医薬品従事者執筆】若い女性に薄毛が増えている原因はエストロゲンだった

最近、女性の薄毛に効果があるといわれる育毛商品が多くなり、薄毛専門のクリニックが目立つようになりました。少し前までは薄毛治療といえば男性用のものが中心でありましたが、ここ最近になって登場したのが40代女性の薄毛と若い女性の薄毛への対策であります。

では、なぜ急に女性用の育毛剤が増えたのでしょうか。そして、いままでの男性用の育毛剤と女性用では何が違うのでしょうか。このような単純な疑問が湧いてきます。そこで、若い女性に増えている薄毛を中心にどのような原因が考えられているのか、この薄毛の対策になる育毛剤が男性用とどのように違うかを検証し、女性用育毛剤の真実に迫ります。

若い女性に薄毛が増えている背景

最近、女性の薄毛に関しての記事が目立つようになってきたのが、ネットによる広告や宣伝、ドラックストアに陳列する商品に記載された「薄毛」の文字の影響であります。

確かに高齢化社会が進み、昔のような40代や50代と違い女性たちが若くなってきました。しかし、年を重ねることを止めることができないため、この年代特有の更年期障害や老化は、確実にやってきます。そして女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が減少するから薄毛が増えています。

ところが、最近になって10代〜20代の薄毛が増えているといわれるようになりました。その症状となっているのが、びまん性脱毛症、FAGA、円形脱毛症、牽引性脱毛症、脂漏性脱毛症、粃糠性(ひこうせい)脱毛症 であります。では、これらの女性の薄毛について解説してみます。

びまん性脱毛症または女性男性型脱毛症(FAGA)

びまん性脱毛症または女性男性型脱毛症(FAGA)は、女性ホルモンであるエストロゲンが関与しているだろうといわれています。

これまでFAGAは、男性型脱毛症であるAGAの原因とされてきましたが、実際にはエストロゲンのバランスが崩れることが原因ではないかといわれ、更年期や10〜20代の若い世代もFAGAが発症してきたのです。つまり、AGAとの関与は少なくエストロゲンが何かの影響から薄毛の原因になっているだろうと考えられていますが、今の所はっきりとした原因は不明になっています。

またFAGAの発症は、AGAのように頭頂部と生え際部分からはじまるのではなく、びまん性脱毛症といわれるFAGAだけあって、髪全体が薄くなっていくのが特徴であります。

円形脱毛症

円形脱毛症は、突然、十円玉のような丸い脱毛が発現します。男性でも女性でも発症するといわれています。ストレスや自己免疫疾患が関与しているのではないかと考えられていますが、実際のところ原因は不明であります。

牽引性脱毛症

牽引性脱毛症は、ほとんどが女性特有に発症する脱毛症といわれています。女性は、長く伸ばした髪の毛を、長時間もポニーテールやお団子ヘヤなどで引っ張り続けます。これが原因となり、頭皮の血行が悪く過度な負荷が頭皮にかかることから発症するといわれています。

脂漏性(しろうせい)脱毛症と粃糠性(ひこうせい)脱毛症

脂漏性脱毛症と粃糠性脱毛症は、多くの脱毛症サイトで別々に取り上げられています。それに症状や治療が同じのため、わかりづらい薄毛になっています。

脂漏性脱毛症ということばは、どちらかといえば脂漏性皮膚炎のことで、頭皮に湿疹ができる皮膚炎であると医学書などに書かれています。原因は皮脂が通常より多く分泌される皮脂異常と考えられています。また発症部位は、額の髪の生え際、眉毛、鼻唇溝(鼻の中心から唇へとつながる部分)、脇の下などといわれています

粃糠性脱毛症は、頭皮にできた脂漏性皮膚炎が悪化し痒みが発症し掻き壊した結果、炎症がひどくなったものと考えられています。一般的にはふけ症といわれているものです。若い男性によく発症します。

つまり、脂漏性脱毛症は皮脂の分泌増加、粃糠性脱毛症はふけの増加の症状になり、それぞれの症状が毛根を塞いだりして脱毛が発生すると考えられています。そのほか、この2つの脱毛症に共通しているのが、常在菌のマラセチアの増殖があるため、治療にはステロイドや抗真菌剤が使われます。

遺伝であっても、早いうちから取り組めば薄毛は改善されるのか?

結論から言うと、現状維持や進行を遅らせる事は可能であっても、現在の医学では改善する事は難しいと言わざるを得ません。現在、髪の毛に関係する遺伝子は、直毛か縮毛かの髪質、濃い黒か赤かの髪の色などがわかっています。さらに、先天性の毛髪の奇形や生まれつき髪の少ない希少疾患などの遺伝子が発見されています。

染色体による遺伝では、女性が母親のものを多く受け継いでいるといわれ、男性の一部も母親から受け継いでいることがわかっています。しかし薄毛については、はっきりとわかっている遺伝子変異が不明なところが多いのが現状なのです。

たとえそれが発見されても治療する方法がなければ、いずれは薄毛になることがわかるだけなのです。では、薄毛になる遺伝を受け継いでしまった場合、発現する時期を遅らせることができるのでしょうか。

遺伝は環境因子の影響を受けるのか

親から受け継いだ遺伝子のなかに、将来、薄毛になることが予想できる分子があった場合でも、環境因子が影響して薄毛の発現がずれることがあるといわれています。例えば、双子の兄弟で同じ遺伝子をもっていても、まわりの友達や学校などの影響から性格が違っていくことがわかっています。遺伝子は、環境因子に影響を受けます。

ですから、ストレス、生活習慣、飲酒、喫煙などが影響して、薄毛になる時期が遅かったり早かったりすることがあります。しかし、この環境因子のなかに育毛剤が含まれていることはないと考えられています。

今わかっている薄毛に関係する遺伝子変異

いま発見されている髪の毛に関係する遺伝子は、直毛か縮毛かがわかるTCHH、太さがわかるEDAR、髪の色が濃くなるIRF-4、髪が赤くなりやすいMC1Rになります。

そのほかに、毛髪の奇形である連珠毛がKRT81・83・86の変異、縮毛症がLIPHの変異、円形脱毛症がULBP3蛋白などとわかってきています。

いま身近なところだと、AGAになる確率が高い男性がもっているARアンドロゲンレセプターが遺伝子検査でわかるようになりました。
参照 初めての遺伝子検査 髪の毛が生える仕組みと遺伝子
参照 遺伝性毛髪疾患 新潟大学医学部遺伝性皮膚疾患研究室

薄毛を改善したい!市販のシャンプーが薄毛に及ぼす影響

一般的に市販されているシャンプーは、薄毛の方に良い影響がないと考えられています。当然、薄毛が気になりだしたら、多くの方が育毛用のシャンプーに変更されるといわれています。でも実際は、市販のシャンプーから育毛シャンプーに変えると高いコストがかかり、もし効果が期待できないときの損失が大きくなります。

そこで薄毛が気になりははじめてから、市販のシャンプーを中止すると本当に薄毛が改善されるのか考えてみたいと思います。こんな単純なことですが、市販のシャンプーと育毛シャンプーの違いを紹介します。

市販のシャンプーに薄毛の改善効果は期待できず

現在、市販されているシャンプーを成分別にわけると、 高級アルコール系、石鹸系、アミノ酸系の3種類になります。いずれも洗浄効果であって、薄毛の改善効果はありません。

高級アルコール系は、市販されているほとんどのシャンプーが属しています。特徴は洗浄力が高く泡立ちがよく爽快感が得られます。しかし、刺激が強いため頭皮や髪の毛を痛めると考えられています。

次に石鹸系は、どちらかといえば自然系のシャンプーといわれ、昔から人気が高くなっています。特徴は、洗浄力が高く毛穴のなかまで洗浄してくれることです。しかし、石鹸系は毛穴のなかまで洗浄することから本来必要な皮脂まで取り除かれ、頭皮が乾燥し傷つきやすくなります。

最後のアミノ酸系は、育毛剤シャンプーに使われていますが、ドラッグストアなどで市販されているものもあります。特徴は、低刺激のシャンプーであることから、頭皮や髪の毛を痛める心配が少ないと考えられています。しかし、刺激が少ない分、髪の毛や頭皮をしっかり洗いたい人には物足りなさがでてきます。

このような3種類のシャンプーが市販されていますが、薄毛に悪影響があると考えられているのは、刺激が強く洗浄力が高い高級アルコール系と石鹸系になります。しかし市販されているシャンプーでもアミノ酸系は、頭皮と髪の毛を痛める心配が少なく、育毛シャンプーの様な薄毛改善効果に期待がもてなくても市販のシャンプーでも良い点があります。

育毛シャンプーがほんとに良いのか

育毛シャンプーのほとんどが、市販されているアミノ酸系シャンプーに育毛が期待できる成分を含めたものになっています。つまり育毛シャンプーは、アミノ酸系に属していることになります。

アミノ酸は、髪の毛や頭皮を構成しているたんぱく質のもとになる成分であります。だから、アミノ酸系で髪の毛や頭皮を洗浄することは、薄毛の原因と汚れを落とし栄養分の補給をしているといわれています。しかし、いくら育毛シャンプーでも泡や成分をしっかり落とさないと、余分な成分が残り頭皮を傷つけることになります。

つまり育毛シャンプーは、育毛の成分を含んでいるもののシャンプーとして毛穴や頭皮、さらに髪の毛の汚れを落とすため、良く洗い流さないと汚れと成分が残り薄毛の原因になるので気をつけましょう。

薄毛を改善するセルフケアー方法

女性の薄毛には、親から受け継いだ遺伝子、職場や家庭でのストレス、食生活の乱れ、過度のダイエット、飲酒、喫煙などさまざまな因子が関わっています。それでも、このなかで改善できるものがあります。

それは、食生活の乱れ、過度のダイエット、飲酒、喫煙などです。反対に改善できないものとして、親から受け継いだ遺伝子、自分だけでは改善しにくいものとして職場や家庭でのストレスなどがあります。

独身でこれから出会いを意識する方であれば見た目も気にする事でしょう。薄毛の問題は重大問題です。出来るだけ仕事のストレスを持ち帰らず、気持ちを切り替える方法を見つけましょう。帰り道に普段通らない道を通ってみるとか、仕事終わりに趣味を取り入れてから帰る、気の合う仲間とカラオケなど自分に合う方法を取り入れてみて下さい。

そして、独身で一人暮らしをしている人は、栄養分が偏りがちです。食生活を見直してみましょう。何といっても、人の身体を作っているのは栄養分です。健やかな髪の成長にも栄養分は欠かせません。一般的に髪の毛にはタンパク質、ビタミン、ミネラルと言われていますが、何よりも大切なのはバランスよく摂取する事です。

もし、薄毛になってしまった場合、育毛剤、育毛サプリ、医薬品などで改善していく方がほとんどです。そこで、これらが薄毛を改善できるのかできないのか解説します。

女性用の育毛剤に効果は期待できるのか

まず、最初に女性用の育毛剤には、男性育毛剤と同じような成分が含まれていることが多いことを知ってください。また女性が男性用の育毛剤に含まれる成分に触れてはいけないといわれているものもありますが、これは妊娠中や授乳中の女性だけで、あとは育毛剤として使わなければ問題はありません。なぜ、触れてはいけないのか、それは男性のAGA治療となる5αリダクターゼ阻害作用があり、 妊娠、授乳中に悪影響を及ぼす可能性がある為です。

男性用育毛剤には男性のAGA治療となる5αリダクターゼ阻害作用を目的としたものが多い為、 女性がそういう種類の育毛剤を使用しても効果は期待できません。血行改善作用などを目的とした育毛剤であれば、男性用育毛剤を女性が使用しても効果が見られる事があります。

なので、どういう作用の育毛剤か確認して使用する必要があります。男女兼用育毛剤や、女性用育毛剤には女性の薄毛に効果が期待できる成分を配合してありますので、作用が分かりにくい場合は兼用か女性用育毛剤を使用される方が間違いはないです。

女性用と男性用の育毛剤で共通した成分は、センブリエキス、ニコチン酸アミド。グリチルリチン酸などが多いのです。これらは厚生労働省が育毛に効果があるのではないかと認めている成分であり、これを含んでいると医薬部外品になります。

育毛剤には医薬部外品と化粧品があり、医薬部外品は厚労省が認めた成分が含有されていますが、化粧品はそれ以外の育毛の効果が期待できるのではないだろうかというレベルのものになります。つまり育毛剤を選ぶときは、医薬部外品のほうが安心ではないかといわれています。

この他にイソフラボンの成分が女性ホルモンであるエストロゲンに影響するといわれ、FAGAに効果が期待できるといわれています。ただし、医薬品のような臨床データがないため、あくまでも予想の範囲になります。

女性用の育毛サプリに効果が期待できるのか

サプリメントは、あらゆるところで効果が期待できるのかできないのか論争になっています。厚生労働省はサプリメントについて、あくまでも食材から補給できない栄養を摂取するための食品になると規定しています。

だから、医薬品とは違います。そして、効果や副作用は未知数で、いまは副作用がなくても5年後や10年後に発現する可能性があります。現にサプリメントの使用から肝臓などへの副作用が発現していることがあります。つまりサプリメントは不足している栄養分を補うという位置づけで捉え、直接的な薄毛の改善は期待しない方がよいという事です。

FAGAに効果があるパントガールとは

現在、男性のAGA治療と同じように女性でもFAGA治療としてパントガールという医薬品が薄毛専門クリニックなどから処方されています。

≪医薬品の個人輸入について≫
「外国では食品(サプリメントを含む)として販売されている製品であっても、医薬品成分が含まれていたり、医薬品的な効能・効果が標ぼうされていたりするものは、日本では医薬品に該当する場合があります」 厚生労働省ホームページより

パントガールに含まれる成分は、パントテン酸やビタミンB1などのビタミン、サプリメントの成分で汎用されているL-レスチンやケラチンなどになります。このようなパントガールは、厚生労働省が日本で販売できる医薬品として認めていません。つまりパントガールは、医薬品の個人輸入扱いになります。

さらに実際に使用されている薄毛専門クリニックでは、パントガールの臨床データが公表されていません。またパントガールは、健康保険が使えないため高額になっています。

まとめ

今回、若い女性にみられる薄毛の原因や治療するときの課題などを紹介しました。これで、あなたの薄毛治療の悩みは解消されましたか。最後に重要ポイントをまとめてみました。
□若い女性がかかる薄毛の原因は、ほとんどがエストロゲンによるもの
□薄毛の原因となる遺伝子は、母親から受け継いだもの
□縮毛症や円形脱毛症の原因となる遺伝子変異がわかっても治療薬がありません
□シャンプーは、育毛成分や市販商品に関係なくアミノ酸系のものを選びましょう
□育毛剤は、商品に薬用と表示されているものを選びましょう
□育毛サプリは栄養補給するための食品で、育毛効果に期待をもってはいけません
□人気があるパントガールは、医薬品の個人輸入扱いで高額になっています

若い女性に増えはじめている薄毛は、ほとんどがホルモンバランスに影響されているといわれています。それ以外に円形脱毛症や粃糠性脱毛症などがあり、皮膚科への受診が必要な薄毛もあります。だから、自分がどのような原因で薄毛になっているか分からない場合は、医師に相談してみてください。

執筆ライター reed-13(製薬品メーカー 医療用医薬品 29年経験)