新社会人の髪が抜ける原因(生活習慣の乱れ編)
毎日忙しく働く社会人にとって、生活リズムを規則正しく保つことは簡単ではありません。とはいえ、夜更かしや外食をずっと続けることは、髪の毛には決して良いことではありません。特に新社会人の方は、慣れない社会人生活の中で生活習慣が乱れがちなのではないでしょうか。そこで今回は、生活習慣の乱れが髪の毛にもたらす悪影響について、詳しく見ていきます。
新社会人の特徴と抜け毛が増える原因
生活習慣の乱れは頭皮の毛細血管の働きを弱める
大学を出て新社会人になると、生活環境が大きく変わります。学生時代とは異なり、残業や付き合いのための飲み会が避けられなくなります。そのため睡眠や食生活など、生活習慣の乱れに悩まされる機会が非常に増えてしまいます。しかし生活リズムが乱れたままでいると、「気が付けば抜け毛が増えていた」という事態になってしまいかねません。
規則正しい生活リズムは、髪の毛に限らず体全体の健康づくりに欠かせません。特に近年、生物の体内にある「時計遺伝子 」が注目を集めています。ヒトの時計遺伝子の働きについて一例をあげると、朝日を網膜で感受することを合図にして、自律神経やホルモン分泌を整えることが分かっています。つまり、朝日を浴びることができる時間に起床することは、健康づくりに欠かせない条件の一つなのです。
参照:「時間栄養学による生活習慣病の予防」
時計遺伝子がつかさどる自律神経やホルモン分泌は、髪の毛の成長にも深くかかわっています。というのも、髪の毛が成長するために必要な栄養は、頭皮をめぐる毛細血管を通して供給されます。つまり、 自律神経やホルモン分泌のバランスが崩れて毛細血管の働きが弱まると、髪の毛への栄養供給も滞ってしまいます。生活習慣の乱れは、髪の毛が栄養失調になって抜けてしまう原因になるのです。
抜け毛が増える原因(睡眠不足)
睡眠不足も抜け毛につながる
睡眠不足によって体全体の調子が乱れると、髪の毛が栄養失調に陥ってしまいます。また「髪の毛の成長を促す成長ホルモンは、睡眠中に分泌される」という点にも注意しなければなりません。睡眠不足が慢性化すると、髪の毛の成長に必要な成長ホルモンが不足してしまうのです。そこで、正しい生活習慣のためにはどの程度の睡眠が必要なのか、詳しく見ていきましょう。
必要な睡眠時間は?
食生活や運動習慣を十分に意識したとしても、就寝・起床のリズムが乱れるだけで生活習慣病の原因となることが確認されています。また、寿命と睡眠時間の関係について110万人を対象に行われた調査によると、もっとも死亡率が低かったのは睡眠時間が平均7時間の人で、8.5時間以上または4.5時間未満になると死亡リスクが15%高まることが分かっています。
参照:「時間栄養学による生活習慣病の予防」
ただし、必要な睡眠時間については個人差があるので、「誰にとっても7時間睡眠がベスト」とは言い切れません。この点について、厚生労働省が作成した「健康づくりのための睡眠指針 2014」では、「日中の眠気で困らない程度の睡眠」を基準にして考えることを提案しています。なお同指針では、必要な睡眠時間が加齢によって少なくなっていくことも指摘されています。
参照:「健康づくりのための睡眠指針 2014」
睡眠の質も大事
もっとも、忙しい社会人にとって、十分な睡眠時間を確保することが難しい場合もあるでしょう。そんな場合には、どうすればよいのでしょうか?この点について、日本毛髪科学協会の電話相談を利用して質問しました。すると、「睡眠の量を増やせないなら、質を向上させることを考えてください」との返答を得られました。
また、睡眠の質を向上させるために意識すべきこととして、以下の項目を教えてもらいました。
・就寝前には明るい光を浴びないようにする(テレビやスマホを含む)
・眠りが浅くなるので寝酒はできる限り避ける
・就寝前3時間は、カフェインの摂取を控える
・体を温めてから就寝するようにする
抜け毛が増える原因(食生活の乱れ)
バランスの良い食事が髪を作る
髪の毛を成長させてくれるのは、毎日の食事を通して摂取する各種栄養素です。偏食によって栄養のバランスが崩れると、髪の毛自体が栄養不足に陥って抜け毛の原因となってしまいます。そうならないためには、バランスの良い食事を心がけることが必要です。
まずは髪の毛を作る材料として、タンパク質を十分に摂取しましょう。動物性タンパク質と、植物性タンパク質の両方が必要です。肉、魚、乳製品、大豆製品など、バランスよく毎日の食事に取り入れましょう。また、たんぱく質の吸収をサポートするミネラルやビタミンも必要です。特に、亜鉛が髪にとって大切です。食事だけでは摂取できない場合は、サプリメントを利用するのも有効です。
忙しい場合は「作り置き」が便利
もっとも忙しい現代人にとって、毎日バランスの良い食事をとることは意外と難しいものです。特に新社会人の場合、学生時代は実家や寮など、食事を用意してもらえる環境で生活していた場合も多いでしょう。しかし社会人になって独り暮らしを始めると、自炊に慣れていないこともあり、外食ばかりになってしまいがちです。
料理をする時間がない場合は、「おかずの作り置き」をすると便利です。時間に余裕がある週末に、平日分のおかずをまとめて作るのです。独り暮らしの人が1食分だけ自炊をすると、かえってお金がかかってしまいますが、作り置きなら数日分のおかずをまとめて作るので、効率的に自炊をすることができます。作り置き用のレシピ本も売られているので、ぜひ参考にしてください。
抜け毛が増える原因(運動不足)
運動不足は血行不良を招く
髪の毛が成長するために必要な栄養は、頭皮をめぐる毛細血管を通して供給されます。したがって、頭皮の血行を良くすることが、髪の健康を保つためには非常に大切です。逆に、運動不足によって全身の血行が悪くなると、頭皮の血行も悪くなり髪が栄養不足に陥ります。抜け毛を防ぐには、運動不足を解消する必要があるのです。
少しの運動を積み重ねよう
ただ、運動不足を解消するといっても、何も毎日ジョギングをする必要はありません。たとえば、毎日10分歩くようにするだけでも構いません。ふだん運動習慣のない人が1日10分間の運動をするだけで、PGC-1αという物質が増加します。PGC-1αとは、骨格筋の発達を促したり肥満を抑制したりする物質です。つまり、たった10分の運動でも効果はあるのです。
参照:「時間栄養学による生活習慣病の予防」
たとえば会社のビルの中でも、なるべくエレベーターではなく階段を使いましょう。そうした小さな積み重ねをしていくことで、運動不足を解消できます。運動の習慣が身に付けば、眠りも深くなるので一石二鳥です。
抜け毛が増える原因(AGAの可能性)
AGAとは?
ここまでは、生活習慣の乱れが原因の抜け毛について説明してきました。これとは別に、男性型脱毛症(AGA)が原因で抜け毛が増えることもあります。AGAの症状が起こる引き金は、テストステロンという男性ホルモンです。テストステロンの作用によって、髪の成長サイクルがミニチュア化してしまうのです。
AGAを理解するために、髪の成長サイクルについて知っておきましょう。1本の髪の毛には寿命があります。数年間の「成長期」を通して伸び続けた後、数か月の「休止期」に入り、やがて抜け落ちます。髪の毛が抜け落ちた後には、同じ毛穴から再び新たな髪の毛が生えてきます。この新陳代謝の繰り返しを「ヘアサイクル」と呼びます。
しかしAGAを発症すると、 髪の毛の「成長期」が非常に短くなってしまいます。髪の毛が成長しきらないうちに「休止期」に入り、抜け落ちてしまうのです。これがヘアサイクルのミニチュア化です。なおテストステロンがAGAを引き起こす部位は、頭頂部や前頭部に限られています。
AGAによる抜け毛も生活習慣の乱れによって悪化する
テストステロンがAGAを引き起こす可能性は、遺伝に左右される部分が大きいと考えられています。生活習慣の乱れと、直接の関係はありません。もっとも、いったん 発症したAGAの症状が、生活習慣の乱れによって悪化することが考えられます。AGAになりやすい体質かどうかに関係なく、生活習慣が乱れないように注意することは大切だといえるでしょう。
まとめ
それでは最後に、今回ご紹介した内容をまとめます。
・生活リズムが乱れると、自律神経やホルモンのバランスが崩れて抜け毛の原因になる
・睡眠不足を解消するには、日中に眠気を感じない程度の睡眠が理想的
・どうしても睡眠時間を増やせない場合は、就寝前にテレビやスマホを見ないなど、睡眠の質を高める工夫をしよう
・平日に自炊をするのが難しい場合は、週末におかずを作り置きしよう
・運動をする時間がない場合は、1日10分歩くようにするだけでも運動不足の解消になる
・AGAの症状が生活習慣の乱れによって悪化する可能性がある
会社で忙しく働いていると、規則正しい生活習慣を維持するのが難しいこともあると思います。とはいえ、小さな工夫の積み重ねによって生活習慣を改善することは十分可能です。心身の健康を保つためにも、生活習慣が乱れないように注意しましょう。