抜け毛の原因はプロテインや筋トレで男性ホルモンが増えるから?について検証
プロテインや筋トレは、男性らしい体を作るために役立ちます。その一方で、男性ホルモンが抜け毛の原因となることも知られています。では、プロテインや筋トレによって男性らしい体を作ると、男性ホルモンは増えるのでしょうか?また、男性ホルモンが増えると抜け毛も増えてしまうのでしょうか?そこで今回は、プロテインや筋トレと抜け毛の関係について詳しく見ていきましょう。
抜け毛の原因?男性ホルモンの働きとは
男性ホルモンは筋肉質の体を作る
まず、男性ホルモンが果たす役割から見ていきましょう。代表的な男性ホルモンとしては、「テストステロン」という物質が挙げられます。テストステロンは、男性らしい体を作るために様々な役割を果たします。筋肉の質と量を強化するとともに、体脂肪を減らすことで、筋肉質の体を作ります。他にも、性機能をつかさどる作用や、血液を作り出す作用、髪の毛を太くする作用などがあります。
男性ホルモンが筋肉質の体を作るのとは対照的に、女性ホルモンは丸みを帯びた女性的な体を作ります。実は男性の体にも女性ホルモンは分泌されているのですが、その量は男性ホルモンよりも少なくなっています。つまり男性の体は、男性ホルモンが多い「男性ホルモン優位」の状態にあります。男性の体は女性に比べて筋肉が多く、体脂肪は少ない傾向にありますが、これは男性ホルモン優位になっているからなのです。
AGAと男性ホルモン、抜け毛の関係とは
男性ホルモンを減らせばAGAにならない?
次に、男性ホルモンと抜け毛の関係について見ていきましょう。「抜け毛」と一口に言っても、様々な症状が存在します。その中で男性ホルモンと関係があるのは、「男性型脱毛症(AGA)」と呼ばれる症状です。AGAの原因となる物質は、男性ホルモンの一種であるテストステロンなのです。
だからといって「テストステロンを減らせばAGAを防げる」という単純な話ではありません。男性ホルモンの分泌が多い「男性ホルモン優位」の状態になったからといって、AGAになりやすくなるわけではないのです。このことを理解するためには、AGA発症のメカニズムについて知っておくことが必要です。
男性ホルモンとAGAの関係
というのも、テストステロンが髪の毛に運ばれたとしても、すぐにAGAを引き起こすわけではありません。テストステロンは、男性らしい筋肉質の体を作る成長ホルモンです。髪の毛を太く強く育てるのが本来の姿なのです。もしテストステロンが直接AGAを引き起こす犯人なのだとしたら、筋肉質の男性はみんな薄毛でなければなりません。しかし、そんなはずがないことは明らかです。
髪の毛に運ばれたテストステロンは、通常はむしろ髪を太く強くします。ただ、 毛乳頭の内部で「ジヒドロテストステロン(DHT)」という物質に姿を変えることがあります。このDHTこそが、髪の毛の成長を阻害してAGAを引き起こす真犯人です。テストステロンはDHTに変身することで、初めてAGAを引き起こす原因となるのです。なお、テストステロンがDHTに変わるかどうかは、遺伝因子によって左右される部分が大きいと考えられています。
したがって、テストステロンの分泌が増えて男性ホルモン優位になったからといって、AGAが起きやすくなるわけではありません。いくら抜け毛が心配だとしても、男性ホルモンを減らそうとする必要はないのです。実際に、AGA治療に用いられるフィナステリド という薬剤には、テストステロンを減らす効果はありません。テストステロンがDHTに変わることを抑制して、AGAの症状を改善するのです。
参照:「男性型脱毛症治療の現状と今後の展望」
筋トレと男性ホルモンの関係を検証
筋肉が増えると男性ホルモンも増える
ここからは筋トレについて詳しく見ていきます。「男性ホルモンによって筋肉質の体が作られる」ということは先ほど確認しましたが、逆に「筋トレによって男性ホルモンが増える」ということはあるのでしょうか?
この点については、男性ホルモンの産生器官に関する研究が参考になります。従来の研究では、男性ホルモンはもっぱら精巣や副腎で作られるとされていました。しかし近年の研究では、男性ホルモンは骨格筋でも作られるということが明らかになっています。つまり、筋トレによって筋肉量が増えると、それだけ男性ホルモンが作られる量も増えるのです。
参照:「運動による新たな性ホルモン合成経路」
筋トレによって、体脂肪が減り筋肉が増えます。すると男性ホルモンの分泌量も増え、体全体が男性ホルモン優位の状態になります。同時に女性ホルモンの影響も抑えられるため、さらに体脂肪が増えにくくなり、筋肉が付きやすくなるという循環ができあがります。
なお、大豆に含まれるイソフラボンには、体内で女性ホルモンに変換される「疑似女性ホルモン」としての働きがあります。そのため、大豆製品を摂取すると女性ホルモン優位に傾くことが考えられます。もっとも、筋トレによって筋肉質・低脂肪の体を作っておけば、男性ホルモンの分泌が活発になり、擬似女性ホルモンの作用も抑えることができます。
筋トレと抜け毛の関係を検証
筋トレが抜け毛を引き起こす場合とは?
このように、筋トレは男性ホルモン優位の状態を作りますが、だからといってAGAの心配をする必要はありません。先ほど確認したように、男性ホルモンの増加がAGAを引き起こすわけではないからです。それでも「筋トレで抜け毛が増えた」という話は、実際に聞くことがあります。筋トレによる抜け毛の原因は何なのでしょうか?
そこで、この点について日本毛髪科学協会の電話相談を利用して質問してみました。
「筋トレで抜け毛が増えたという話を聞くことがあるのですが、何か理由があるのですか?」
「無理な筋トレによって、栄養バランスが崩れたことが原因 でしょう。筋トレと並行して無理なカロリー制限をすると、髪への栄養補給が後回しになってしまうことがあります。そのため抜け毛が増えたと考えられます」
つまり筋トレによる抜け毛は、一種の栄養失調によるものだそうです。男性ホルモンの増加によるものとは考えにくいとのことでした。もし筋トレをしていて抜け毛が気になっているのだとしたら、普段の食事内容を見直すと良いでしょう。
プロテインと男性ホルモン、抜け毛の関係を検証
プロテインと男性ホルモンの関係
ここからは、プロテインについて見ていきましょう。まず、プロテインを摂取することで男性ホルモンは増えるのでしょうか?この点について、プロテインを製造・販売している食品メーカーに問い合わせてみました。
「プロテインを摂取すると、男性ホルモンは増えるのですか?」
「プロテインは、あくまでも栄養補助食品です。筋肉増強剤とは異なり、男性ホルモンの分泌に直接働きかける作用はありません」
プロテインが直接、男性ホルモンを増加させるということはないようです。もっとも、プロテインと筋トレによって筋肉量が増加した結果、間接的な効果として男性ホルモンが増加する可能性ならあるとのことです。
プロテインと抜け毛の関係
では、プロテインの摂取によって抜け毛が増えることはないのでしょうか?この点についても、引き続き質問してみました。
「プロテインには、髪が抜ける副作用はないのですか?」
「先ほども説明したように、プロテインは食品です。薬剤のような副作用が出ることはありません。むしろ、プロテインに含まれるたんぱく質は、髪の毛の材料となる栄養分でもあります。プロテインを毎日の生活に取り入れることで、髪の毛への栄養補給も効率的に行えます」
プロテインを摂取するにあたって、抜け毛のことを心配する必要はないようです。もっとも、 プロテインを過剰摂取すると体全体の栄養バランスが崩れてしまうため、髪の毛にも悪影響を及ぼす可能性があるとのことでした。
抜け毛対策しながら筋トレする方法
筋トレによる抜け毛を防ぐには?
ここまで見たところから、筋トレやプロテインが直接に抜け毛の引き金となるわけではないことが分かりました。注意するとすれば、 無理な筋トレやプロテインの過剰摂取によって栄養バランスが崩れることで、間接的に抜け毛が増えてしまう危険性です。
無理のない筋トレのために
つまり、体に余計な負担をかけない筋トレをすることが、抜け毛対策としても効果的だと考えられます。この点について、トレーニングジムに問い合わせてみました。
「体に無理のない筋トレをするために、注意すべきことは何ですか?」
「意外と見落としがちなのが、 脂肪や炭水化物を制限しすぎると良くないという点です。筋肉をつけるためにたんぱく質の摂取を増やすべきなのは当然なのですが、最低限の脂肪や炭水化物も必要です。脂肪(コレステロール)は成長ホルモンの材料になりますし、炭水化物が不足するとたんぱく質が代わりに使われてしまいます」
具体的には、次のポイントに気を付けて食事をすると良いそうです。
・炭水化物の不足を防ぐために、毎食必ず茶碗1杯のごはんを食べる
・コレステロールの不足をふせぐために、毎食必ず卵を1個食べる
・たんぱく質の吸収を助けるアミノ酸を摂取するために、毎日納豆を食べる
まとめ
それでは最後に、今回ご紹介した内容をまとめます。
・男性ホルモンは筋肉質の体を作るのに役立つ
・男性ホルモンが増えたからといってAGAになるわけではない
・筋肉が増えると男性ホルモンも増える
・プロテインに抜け毛が増える副作用はない
・無理な筋トレをすると栄養バランスが崩れ抜け毛が増える恐れがある
・筋トレ中も、必要最低限の脂肪や炭水化物は摂取しよう
私自身プロテインに対しては薬品のようなイメージを持っていましたが、あくまでも食品だという話を聞いたことで、印象を新たにしました。普段の生活に上手にプロテインを取り入れることで、筋トレはもちろん健康な体作りにも役立つと思います。